ようこそ、最先端の混沌へ『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
※読んでいただき本当にありがとうございます。この記事はネタバレこそしないものの、かなりストーリー内容に踏み込んだ内容となっております。あらかじめご了承の上ご覧ください。
最高にカオスなあらすじ
画像引用:公式サイト
主人公エヴリンは自分の人生に絶望していた
- 頑固すぎるモラハラ父親の介護
- 優しさにステータスを全振りした結果、優柔不断で頼りない男になってしまった夫
- 大学を中退し、タトゥーを彫り、女性の恋人を連れてきた際に大喧嘩をしてしまう娘
- 経費の申告の際に全力でいびってくる嫌味な監査官
自分の今の状況を考えただけで
ストレスが限界突破して別世界にぶっ飛びたくなる。
そんなある日
平凡な夫が突如豹変し
エヴリンにいきなりとんでもないことをぶっちゃける
「いいかい?エヴリン」
「僕は君の夫じゃない」
「別の宇宙(ユニバース)から来た“僕”だ」
「全宇宙の命運は君に託された」
最高にぶっ飛んだ登場人物たち
エヴリン/ミシェル・ヨー
画像引用:公式サイト
- 優柔不断な夫ウェイモンドとコインランドリーを営む貧乏すぎる主婦
- 中国で生まれ家族の反対を押し切ってウェイモンドとアメリカへ駆け落ち
- 目標を立てては挫折し、夢を抱いては諦める自分にイライラしている
- ある日、ウェイモンドが急に豹変し、自分は違う宇宙のウェイモンドでエヴリンに宇宙を救ってほしいと滅茶苦茶なお願いをされる
ウェイモンド/キー・ホイ・クァン
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- エヴリンの優しき夫
- 優しさにステータス全振りしてる
- 実はエヴリンとの離婚を考えてる
- しばしば別宇宙アルファバースのウェイモンドと入れ替わり、エヴリンに全宇宙に混沌をもたらすジョブ・トゥパキと戦ってほしいと無茶苦茶なお願いをする
ジョイ:ジョブ・トゥパキ/ステファニー・スー
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- エヴリンの娘
- ガールフレンドがいることを快く思わない母親にブチギレてる
- 別次元のジョイはジョブ・トゥパキという名で超越的な力で宇宙をぶっ壊そうと目論んでる
- 全宇宙のエヴリンを探して殺しまわっている
ディアドラ/ジェイミー・リー・カーティス
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- 国税局の圧が強すぎる監査官
- エヴリンの提出した控除の申請書類の不備を指摘しまくる
- ジョブ・トゥパキに洗脳され、レスラーになっている世界の自分をダウンロードしてエヴリンを襲う
- お願いだから嫌いにならないであげて
多次元宇宙的な映画の魅力
全員ハジけるために体張り過ぎ
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別の宇宙、いわゆるマルチバースに初めて接触した“アルファバース”に住んでいると言うウェイモンドから戦う術を伝授されるエブリン
- カンフーを極めた世界線のエヴリン
- 看板まわしを極めたエヴリン
- 料理を極めたエヴリン
- 歌を極めたエヴリン
- 指がソーセージになったエヴリン
エヴリンは“バースジャンプ”して異次元の「あり得たかもしれない自分」とリンクする。
別の自分が持つ機能にアクセスし、自分のスキルとして習得できるのだ。
多次元宇宙の自分から“カンフー”を一瞬で教わり、敵をぶっ飛ばしていく主人公の姿はもうマトリックスのキアヌ・リーブスにしか見えない。
まさにチート機能だ。
だがこのバースジャンプを行うためにはある条件がある
それは「最強に変な行動」をとること
- リップクリームを食べる
- 嫌いな相手に全力で愛の告白をする
- 指と指の間を紙で切る
統計的には絶対にあり得ない行動をとることで別の宇宙の自分にアクセスできるのだ。
バカバカしければバカバカしいほどそれが燃料となってジャンプを早く確実に成功させる。
その条件は敵側も一緒だ。
つまりエヴリンも敵も
戦闘中に全力でハジけた行動をしなければならない。
それはもう全力でハジける。
戦闘中に敵は全力でお尻にトロフィーをぶち込むし
エヴリンは全力で小便を漏らしながら戦う。
無駄に格闘シーンのクオリティが高いのも相まって
最高にシュールで下品でスタイリッシュな絵面となっている。
体張りすぎてて見てるこっちが心配になってくるレベルだ。
監督のアイデアが火山のように噴火し
大量の情報量が観てるこっちに降り注いでくるようなこの映画は好みがはっきり分かれる映画と言える。
涙が出るほどかっこいいキー・ホイ・クァン
主演のミシェル・ヨーは気合いの入ったアツい演技を見せてくれるし、他の役者たちの渾身の体当たり演技は観ていて気持ちがいい
だが、強いてこの映画で一番のMVPを選ぶとしたら、私はキー・ホイ・クァンを選びたい。
キー・ホイ・クァンが今回演じるのは様々なストレスで爆発寸前なエヴリンの尻にしかれる気弱な夫ウェイモンド。
しかし、バラバラになりそうな家族の絆を、何とかつなぎとめようと奮闘する優しい男でもある。
(この時点で彼はすでにめちゃくちゃ魅力的なのだが)
彼が、別の宇宙を生きる自分(アルファ・ウェイモンド)に体を乗っ取られたことで事態は急展開を迎える。
突如として全宇宙をカオスに陥れる巨悪から宇宙を救うハメになったエヴリンに、別次元の自分のスキルにアクセスできる「バース・ジャンプ」を伝えるウェイモンド
彼女と共に全宇宙の命運を掛けた壮絶な戦いに挑むことになる彼の勇姿は最高にクールと言わざるおえない。
子役時代は「インディ・ジョーンズ」や「グーニーズ」などで一世を風靡したキー・ホイ・クァンだったが、大人になるにつれて俳優の仕事は減っていった。
ハリウッドにおいて子役から大人の俳優の仕事をもらうのはめちゃくちゃ厳しいと言われている。
残念ながら彼もその例外ではなかった。
大人になってからは『X-MEN』(00)やジェット・リー主演の『ザ・ワン』(01)といった作品で、アクションコーディネーターやスタントなどを担当し、ハリウッド映画を裏から支えてくれていた。
そんな彼が俳優として完璧なカムバックを果たした作品
それが、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だ。
今作品でキー・ホイ・クァンは優しく頼りない夫と宇宙を股にかけてウェストポーチ・ヌンチャクで悪に立ち向かう頼もしい男というキャラクターを見事に演じ分けてている。
YouTubeでも公開されている映像では、今まで培ってきたクァンの多彩なアクションスキルが盛大に炸裂している。
クァンの本作に至るまでのキャリアが存分に発揮された映像に仕上がっている。
岩が全力で泣かしにくる
お前はいきなり何言ってんだと言われても仕方がないかもしれないが
この映画は岩が全力でこちらを泣かしにくる
なんでいきなり岩の話になるのか
実は多次元宇宙の中には生物が発生しなかった世界も存在する
人間がいない世界でエヴリンはどうなっているのか
それは岩だ
エヴリンは岩になってる
エヴリンが岩になった世界では戦いもなく、絶え間なく流れていたクールな音楽も止まり、会話は字幕という最高にシュールなものとなっている
なぜそんなシーンが我々を全力で泣かしにくるのか
それは是非映画を観て知ってほしい
そしてその感想をブログのコメントに書いてくれると管理人は飛び上がって喜ぶと思う
生物のいないこの世界線は生きる意味を見出そうと社会でもがく人にブッ刺さりすぎてもはや貫通してしまう描写になっている。
このシーンを見るためだけでもこの映画を観る価値は十分あると私は思う。
人生において「何者にもなれなかった」と自己嫌悪する人へ
画像引用:公式サイト
この映画は下品(褒め言葉)なマルチバース&カンフー&SF映画であると同時に
本当の世界で「何者にもなれなかった」エブリンが自分の虚無な人生とどう戦うかを描いた至高の哲学映画でもある。
初めて違う世界の自分を見たエヴリンが感じたもの
それは、“恐怖”ではなく“後悔”
その世界のエヴリンは夫と結婚せずに山に籠ってカンフーを極め、
世界に名だたるアクション俳優として大成功していた
あの時、夫と結婚していなければ
あの時、コインランドリーなんて開業しなければ
あの時、父親の言うことを聞いておけば
あの時、こうしていれば
あの時、あの時、あの時、あの時、あの時
おそらくみんなが一度は考えたことがあるであろう「あの時」
私自身も多分1万回ぐらいは考えたことがある。
あり得たかもしれない輝かしい可能性をリアルで目撃してしまったエヴリンは
人生の選択に後悔し、全力で虚無ってしまう
観てるこちらとしては分かりみが深すぎてマジでつらくなってくる
そんな虚無エヴリンに夫のウェイモンドはこう言う
「優しくしなくちゃ」
この世界に意味なんてものは本当にないのかもしれない
もう人も神も信じられないかもしれない
たとえ本当にそうだとしても
たとえどんなに絶望的な状況だとしても
たとえこの世界が無数にあるマルチバースの1つにすぎなくても
今の人生を生きるしかない
それなら目の前の人に優しくしよう
その優しさは絶対に無意味なものなんかじゃない
人生に絶望していたエヴリンが最後に選んだ道をどうか映画を観て見届けてほしい
まとめ
多次元宇宙の可能性をとことん突き詰めた傑作
画像引用:公式サイト
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はマルチバース(多次元宇宙)をコンセプトにアクション、下ネタ、人生の意義などあるゆる側面から楽しめる素晴らしい映画だ。
あまりに尖りすぎた演出が故、おそらく好き嫌いがはっきり分かれる作品かもしれない
しかし、私は自信を持ってこう言いたい
「この映画はマジでぶっ飛んでて面白いよ」
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